冷静と情熱のあいだ 2016ハロウィンの出会い
2016年12月30日
僕の家に向かう車の助手席で彼女は黙っていた。
窓から流れる景色を見る。
師走の街は、どこも忙しそうだった。
声がした。
黙っていたのではなかった、彼女は泣いていたのだ。
左手で握っていたハンドルを持ち替え、手を繋ぐ。
そう、約一年に亘る、名古屋生活も今日で終わろうとしていた。
◆
「ナオキさんハロウィンどうします?」
こう聞いてきたのは、ホークス。
当時コンビを組んでおり、ナンパはほぼホークスと出撃していた。
『もちろん行こうよ、コスプレ何にする?』
「内緒っす」
『コンビ即はしたいな』
「ですね」
僕は転勤で名古屋に移り住み、遊び程度でしていたナンパから、本格的にクラスタとしての活動をしていた。
クラスタ友達も出来て、ナンパに精を出していた2016年(2年前)のハロウィン3日連続ノックの時のお話。
◆
ハロウィン初日ーー
浮ついた雰囲気が栄全体に漂っていた。
鷲箱にクラスタ10人くらい集合して、着替えて出撃。
僕は医者。
ホークスのコスプレは、赤福の店員。笑
「いらっしゃいませー!」でフルオープン。
ズルい(笑)
鷲箱を出て何組かに声掛けして、数組目に彼女はいた。
「ハッピーハロウィン!写真撮ろう!」
『いいよ!』
彼女はコスプレをしていなかった。
「写メ送るからライン教えて」
時間にして、ほんの数分。
もう一回会ったけど、男の人と一緒にいたし、全然気にも留めてなかった。
その後も流れるようにナンパをし続けた。
◆
翌日――
前日にバンゲした何人かとラインメンテしている中に、彼女はいた。
撮った写メを送ってと何度か言われたが、どれが彼女か分からない。
話を逸らすようにこう聞いた。
「今日はコスプレしーひんの?」
『するよ!』
「じゃぁ一回会おうよ」
なんてやりとりから当日会う事になった。
顔なんて、ほとんど覚えてなかったのに。
18:00ー
白衣を着込んでいても少し寒い。
雨も少し降っていた。
赤福ホークスと、もう一人クラスタと合流し、サンシャイン栄にて彼女を待つ。
ドン・キホーテから友達と一緒に出てきた。
彼女は白雪姫のコスプレをしていた。
その時は正直、あーあの子か、コスプレしてなかったあんまり可愛くないな所謂ちょうどいいブスかな子くらいにしか思っていなかった。
そこで、数枚写真を撮って、彼女達の予定もあり、僕たちも女子大のハロウィンイベントへ。
また良かったら合流しようよ、と言ってブーメランだけ投げといた。この時点では、全く再合流する気がなかった。
◆
そして、女子大のイベントに。
何人もの女の子と写真を撮って、バンゲして、お手製のラインQRの紙を渡す。これを繰り返していた。
何組かと和んではいたが、特に決定打のないまま時間だけが過ぎる。
前日はわちゃって終わっただけに、今日は決めておきたい。
溜まっていたラインを確認する。
すると彼女からラインがきていた。
『どこにいるの?』
「女子大やで」
『いま一人なの』
「そうなん?行こか?」
あの時いた友達はどうした?
彼女の話だと、その友達も赤福(ホークス)に会いたがっていたという。
疑問はあったが、ホークスと向かう。
(もう一人のクラスタも快く送り出してくれた。感謝してます)
数十分後、再びサンシャイン栄にて合流。
それから、ほどなくしてその友達も無事に合流できた。
時間は22時半。
雨はすでに止んでいた。
微妙は時間だったが、ここから新規で見つけに行くよりも、彼女たちをターゲットに進めた方が良さそうだ。
幸いにも二人ともに食いつきはある。
ホークスと和む、どこに行くとも提案せずに4人で歩き出す。
徐々に距離をあけていく。
そしてホークス得意の光速タクシーセパ。
前を歩いていた僕たちの横を、割烹着を着た赤福店員と友達が乗ったタクシーが久屋大通を華麗に通り過ぎる。
それを横目で確認する。
「なぁ、何したい?」
『んー、ドライブしたい!』
「いいね」
車に乗り込み、あてもなく走り出す。
和みを入れて、ゆっくりしたいルーティンからのヨネスケからの即。
家についた途端、コスプレを脱がれた事が残念だった。
暗闇の中でラインを見る。
ホークスも即ったようだ。
時間は1時、まだいけるか。2即目を狙いにいきたい。
でもここは彼女を尊重したかった。
「なぁ、まだ一緒にいたい?」
『一緒にいたいよ』
「そっか」
くっついてくる彼女を見ると、外に出る気になれなかった。
スマホを置く。今日はもういいか。
彼女のベットで二人で眠りについた。
◆
男と女なんて、出会いと別れの繰り返しだ。
ナンパして、身体が重なったとしても、連絡が途切れることの方が多い。
あの時、何故抱いたのか、何故抱かれたのか。
今となっては、それを答え合わせしても意味はない。
きっと、抱かれたきっかけよりも、抱いたあとの方が100倍大事なんだ。
◆
ホークスからは、え?まだあのあんまり可愛くない子と続いてるんですか?笑
なんて言われたけど、彼女とは付かず離れずの距離感でなんとなく関係が続いていた。
彼女は僕に好意があっただろう。
僕もなんとなく一緒にいて落ち着いている自分がいた。
家でデートしたり、飲みに行ったり、セックスしたり。
◆
時が過ぎるのは早いもの。
出会ってからあっという間に数ヶ月が経っていた。
迎えた名古屋最終日。
僕の家に向かう車の助手席で彼女は黙っていた。
窓から流れる景色を見る。
師走の街は、どこも忙しそうだった。
声がした。
黙っていたのではなかった、彼女は泣いていたのだ。
左手で握っていたハンドルを持ち替え、手を繋ぐ。
『本当に行っちゃうんだね』
「仕事だからな」
目は真っ赤、鼻はぐちゅぐちゅで彼女は僕を見つめる。
僕は視線を合わさずにこう言った。
「今までみたいに会うことは出来ないけど、引っ越しても会おうな。そして今までありがとう」
半分本当で、半分ウソだった。
涙声で彼女は頷く。
家についてからも、彼女の涙は止まることがなかった。
◆
本当は、名古屋でナンパで知り合った女の子達は、引っ越しと共に全員切るつもりだった。
だから彼女を含めて、全員に引っ越ししたら念入りに会えなくなることを伝えていた。
時間が経てば自然と切れていく縁がほとんどだけど、何故だか切れない縁もある。
引っ越してからも、付かず離れず彼女とは切れることはなかった。
◆
ナンパを始めると、最初は地蔵ばかりで何も出来ないのに、慣れてくるとバンゲしたり準即したりできる。
結果が出てくると、ナンパ師としてやりたいこと、かなえたい事が増えてくる。
年間100即?弾丸即?逆3P?くるくる?
僕は、そのどれでも違う、一つのやりたいことがあった。
それは ケーゴさんの冷静と情熱のあいだ のブログに代表されるように、同じストーリーでの女の子目線のブログだ。
ナンパした相手に、ブログを書いてもらう事。
ただ、これにはハードルが高く、どうしても自分の身分を明かせなかった。
ナンパして、即った相手にナンパ師とカミングアウトするメリットはどこにもない。
しかし彼女には、あるきっかけでクラスタの活動を知られるようになった。
そう、これは冷静と情熱のあいだ、ナオキの青の物語。
彼女には、ナンパ師としての活動を、そしてその身分を明かしてある。
出会った当初は、年齢をごまかしていた事、その全てを知っている。
このブログ内容も彼女には目を通してもらっている。
それを知ったうえで、ブログを書いてもらう事を了承してもらった。
寄稿してもらう上で僕からの注文は、ただ一つだけ。
面白おかしく書かなくていい、ただその時思った事を、ありのままに書いほしいと。
次回、彼女の赤の物語に続く――。